美濃国・岩村城の藩主邸跡地で、佐藤一斎をしのぶ「言志祭」に元首相小泉純一郎も参列しました。
平成21年(2009年)10月24日藩主邸跡地に佐藤一斎翁像の前で、没後150年にあたり関係者ら約400人の出席で行われました。
▲岩村城藩主邸跡に建つ佐藤一斎翁像
小泉元首相は、在任中の国会答弁で佐藤一斎の「言志晩録60条三学の精神」
『少にして学べば 則ち壮にして 為す有り 壮にして学べば 則ち老いて衰えず 老いて学べば 則ち死して朽ちず』
これを、解りやすく言うと→社会に役立つ有為な人になろうとの高い志を抱いて学び続ければ、その精神は朽ちることが有りません。より良い自分を目指して生涯学び続ける人は、いつまでも人の心に残る人になります。
▲当時の「言志祭」の風景
『言志四録』は、佐藤一斎42歳のときから死期の近ずいた80歳過ぎまで、半生をけけて書き足され続けた箴言集である。
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『言志録』『言思後録』『言志晩録』『言志耊録』の四篇か
らなり、これらをまとめて『言志四録』と称してる。
本テキストは、一斎の思想の全体を最も生々しい形でおおう、基本文献です。
▲佐藤一斎
人生論・学問論・政治論・運命論という性格のせいもあって『言志四録』の内容は多岐にわたる。
しかし「言志」というその名に違うことなく、『言志四録』は一言で言えば、佐藤一斎の「志」を余すところなく表明した書である。
つまり一斎の志は、自己の独立なのであった。 そして立志こそが、そのまま彼の学問(学)びであった。
佐藤一斎は30代半ばで林家の塾長となり、門下生に渡辺崋山・佐久間象山・安積艮斎(ごんさい)・大橋訥庵(とつあん)・中村敬宇・(政直)ら数多くの逸材が学んだという事実。
直接の門人であった彼らにおいてはもちろんのこと、一斎の思想が与えた影響は、その下の世代にも広く及んだ、佐久間象山が後に吉田松陰の師となったように、志士たちの儒学的素養が(関係の直接・関節を問わず)一斎の教育にあずかるところは大きかった。
佐藤一斎が還暦近ずいていた頃に吉田松陰や西郷隆盛が生まれた。
その頃には佐藤一斎は幕府の管轄下にある学問所の教授として、若い志士たちに比べれは明らかに保守的な立場であった。
ここに『言志四録』の内『言志録』と『言志後録』の一部を書き出しました、自身の参考になればと思います。
後の『言志晩録』と『言志耊録』は後編として記載します。
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▲佐藤一斎
『言志録』の抜粋
① 私欲は有る可からず 公欲は無かる 可からず 公欲無ければ則ち人を恕する能わず 私欲有れば則ち物を仁する能わず
「言志録221条」※自分さえよければという気持ちを捨て、人のためにとい う気持ちを持たなければなりません。
そうでなければ、相手へ思いやりや人のために働くという心も起きてはきません。
② 一芸の士は、皆語る可し
「言語録61条」※一つのことを極めた人は、その道だけではなく、物事の 本音まで深く語ることができるものです。
③ 分を知り 然る後に足るを知る
「言語録42条」※まず自分をよく知ること。そうすれば、今の自分に満足 を感じることができます。
④ 着岸高ければ 則ち理を見て岐せず
「言志録88条」※高く広い視野を持てば、物事の道理が見え、大事に接し ても決して迷うようなことはありません。
⑤ 親を賞するの辞に曰く 庭訓素有り と子を賞するの辞に曰く 能く庭訓に従うと
「言志録114条」※親を褒める言葉として、「家庭での教育がしっかりして いるから、立派な子供が育っている」と言い、子供を褒める言葉として、「よくお父さんやお母さんのいうことを聴いて、きちんと育っている」と言います。
『言志後録』の抜粋
① 克己の工夫は、一呼吸の間に在り
「言志後録34条」※このままではいけない。
自分を変えたいという行動は、「よし、やるぞっ」と一瞬のうちの決意から生まれるものです。
② 春風を以って人に接し 秋霜を以って自ら 粛む
「言志後録33条」※春風のように相手の気持ちを温かくし、元気が与えら れるような接し方がしたいものです。
そして、いつも自分に厳しく、秋の霜のように心を引き締めて生活したいと思うものです。
③ 凡そ教えは外よりして入り 工夫は内より して出づ
「言志後録5条抜粋」※教えは外から入ってくるものですが、工夫は自ら が生み出すものです。
学びは、生かすためにこそあるのです。
④ 鱗介の族は 水を以て虚と為して 水の実たるを知らず
「言志後録53条」※水中の魚たちは、水が無くなるまでは、それが大事な 存在と気づかずにいます。
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⑤ 進歩中に退歩を忘れず 故に躓かず
「言志後録59条抜粋」※物事が順調に進んでいる時にこそ、うまくいか なくなった時のことを考えておきましょう。
そうすれば、万一の時にもきちんと対応することができます。
⑥ 信を人に取れば 則ち財足らざること無し
「言志後録224条」※人からの信用を得ることができたなら、生きていく上 で物資に困るようなことはありません。
必ず誰かが助けてくれます。
⑦ 人は皆身の安否を 問うことを知れども 而 も心の安否を問うことを知らず
「言志後録98条抜粋」※人は、体の健康にはずいぶん気を使いますが、心 の健康には無頓着なものです。
⑧ 百年再生の我無し 其れ曠度すべけんや
「言志後録109条」※もし仮に、百年たって人間に生まれ変われることがあ ったとしても、今の自分ではない別の自分にしか生まれ変わることはできません。
一度しかない今日を無駄に過ごしてはなりません。