刀は武士の力を象徴するものであり、平安・鎌倉の時代・戦国時代・徳川時代に至るまで刀が造られたものが、今でも光輝いている。
宝石よりも美術品として重宝されています。
幾多の武将が愛した日本刀、今なおその魅力に取り憑かれている日本人が多いことか?
日本刀と聞いて思い浮かぶのは?侍が持っている刀をイメージする方が多いと思いますが、ここ数年は舞台化やアニメ化されたオンラインゲーム「刀剣乱舞」の人気もあり、日本刀に夢中になる「刀剣女子」が急増しているとか。
とはいえ、日本刀は博物館か展示会か映像でしか見ることがないし、遠い存在…。
刀剣の構造と名称
刀剣を知るには、各部位の名称を覚えることが先決だと思います。
特に大きさの基準になったり、刀剣を鑑賞する上で、その刀の個性を決める場所などは覚えておくのが良いでしょう
▲全長と刃長の呼び名
刀の全長と刃長
刀身は「上身」(かみ):(刃の付いてる部分)と、「茎」(なかご:通常は柄に収まってる部分)に二分され、その境目を「区」(まち)と呼ぶ。
この区はさらに刃のついている側の「刃区」(はまち)と「棟(峰)」(むね)側の棟区に別れる。
刀身先端と茎尻(茎の下端)を結んだものが全長、先端と区では「刃長」になる。
この刃長を示す線と、刃長の棟が最も離れている場所の長さが刀の「反り」になる。
反りは刀の姿を決まる重要な要素の一つとなる。
長さ以外で大きさを表す言葉としては、刀の幅を「身幅」、厚さを「重ね」という。
幅は測る場所で異なるため、「先身幅」や「元身幅」と使い分けることが多い。
筋と横手筋
刀身の側面には「鎬筋」(しのぎきん)または「鎬」という盛り上がりがあり、この鎬筋から刃先までの側を「平地」(ひらじ)と呼び、棟までの側を「鎬地」(しのぎじ)と呼びます。
先端部で鎬筋のように横に走る盛り上がりが「横手筋」(よこてすじ)といいます。
ここから先が「鋒」(きっさき)といいます。
これでもう、この時代の刀は波長が長くて反りが強い。「広い身幅に薄い重ねで大きな鋒が特徴ですね」と聞いても理解が出来るはずです。
刃文の形状
刃文とは
焼刃の形状のことをいいます。
大別して直刀と乱刀に別れる。
時代や刀工の特徴を大きく反映いるための刀の見所でもあります。
⬛️細直刀
直線的な刃文で焼幅が狭いもの。さらに焼幅を狭くすると「糸直刀」と呼ばれる。
◯乱刀(みだれば)
直線的な直刃に対して刃文が波立っているいるものの総称。曲線の間隔などにより丁子や互具の目、湾れ刃(のたれば)などがある。
⬛️丁子(ちょうじ)
乱刃の一種。丁子の実を並べたような形状。「逆丁子」や「袋丁子」など様々なバリエーションがあります。
⬛️濤瀾乱刃(とうらんみだれば)
大きな波がぶつかり合い、波が崩れる様子を表したと言われる刃文。江戸時代中期の刀工・津田助廣が考案した。
⬛️棟焼
棟にも焼きが施されているものをいう。相手の刀を棟で受けることを想定して棟の強度を増すためだといわれる。
帽子
鋒部分の波紋のこと。鋒は刀を操る上でも重要な部位であり、鍛造や研磨でも技術のいる重要な部位である。
⬛️中丸帽子(ちゅうまるぼうし)
ふくら(先端から横手筋までの曲線)に添って円を描く刃文。円が大きければ大丸、小さければ小丸と呼ぶ。
⬛️乱込帽子(みだれこみぼうし)
横手筋から上が乱れているもの。帽子の下が直刃が乱刃にかかわらず、峰の状態で呼ぶ。
⬛️掃掛け帽子(はきかけぼうし)
焼き刃に添って箒で掃いたように筋が棟先に流れるものです。
⬛️火焔帽子(かえんぼうし)
乱れ込みが激しく、先端の尖った焼刃が激しく燃える炎のようであるために呼ばれます。
○弛み帽子(たるみぼうし)
横手筋から先端に向かって中程が浅く弛んでいるもの。三作帽子、三品帽子と呼ばれる帽子も弛み帽子の一種である。
刀身の形状分類をみてみよう
造込み
刀剣の形状分類「造込み」刀剣の形状のこと。
反りの格好や鎬の有無、各部の厚みの違いや棟の構造など含みます。
⬛️平造
鎬筋を作らない平面の造込み。上代初期の直刀にみられ、切れ味に優れる。短刀や脇差に多いが南北朝時代から室町後期の太刀にもある。
⬛️切刃造
平造に次いで出てきた造込み。鎬状の筋が刃に寄っているにが特徴です。彎刀(わんとう)が現れる以前の奈良時代の直刀に多くみられます。
⬛️鋒両刃造
棟部分が両刃になっている造込み。切断と刺突を目的とし、直刀から彎刀の移行期のものです。代表的な刀剣から小鳥丸造とも呼ばれます。
⬛️鎬造
平安時代以降の彎刀にみられる造り。刀身に鎬筋を立て横手筋をつけて鋒部分を形成する日本刀らしい形です。
⬛️両刃造
鎬筋を境にして左右に刃が設けられた造込み。短刀に多くみられる。刺突と切断の効果を追求した形です。
⬛️片切刃造
刀身の片面が切刃、もう片面が平である造込み。奈良時代以前の直刀にみられる。江戸初期にもこの造込みの脇差や短刀が作られた。
⬛️菖蒲造
横手筋がなく鎬筋が茎から切先まで通っている造込み。姿が菖蒲の葉に似ていることから名付けられました。突き刺すのに適し短刀や脇差に多くみられます。
⬛️おそらく造
反りが高く中程に横手筋を設けた切先が大変大きい造込みです。島田助宗作の短刀に「おそらく」という彫刻があったことがある。
⬛️鎧通造
身幅を狭めて重ねを厚くし、丈夫な鎧の隙間から刺し貫けるような形にしたもの。刃中も短く組み打ちに適した造りです。
反り
刀で効果的な斬撃を行うには叩いて引く必要があり、その際の衝撃を吸収し、切り抜けを容易にするため反りがつけられた。
また、抜刀を容易にする意味もある。
先頭様式の変化と共に反りの大きさや位置も時代によって違いがあります。
⬛️腰反り
反りが腰の辺りで最も強い体配。
柄を反らせて効果を出していたものから発展し、平安時代の末期から室町時代の初期に多くみられるます。特に備前物には腰反り多い。江戸期にも備前物の古作を手本とした刀工の作品にもみられます。
⬛️中反り
反りの中心が中央にある体配で輪反りともいう。また、鎌倉時代の山城物に多くみられることから京反りとも呼ばれています。神社の鳥居に渡されている笠木の形に似ることから鳥居反り、傘置反りともいう。
⬛️先反り
反りが物打ち付近でさらに加わっている様子をいう。腰反りが騎乗時での抜刀や斬撃に適していたのに対し、徒歩戦が主流となる室町時代から安土桃山時代以降の打刀に多くみられます。地上の抜刀、操刀での利便性を追求した結果の形です。
⬛️踏張り(ふんばり)
反りの形態の一つを表現する言葉。
身幅が先端に行くに従って極端に細くなり、反りが高く鋒がうつむき加減の刀身の腰元部分をいう。
平安時代から鎌倉時代の太刀に多くみられる。踏張りのある刀身は力強く優美だとされます。
⬛️内反り
打刀とは逆に刃先側に反っているもの。
通常の反りは鍛造の工程で反りを出すものだが、この反りは刃の研磨によって生まれる。上古時代の直刀や鎌倉時代の短刀にみられます。
⬛️筍反り
内反りの一種。上身が刃の方向に傾いているために、極端な内反りに見える。短刀によくみられる。研磨によって反りを得ているため、腰反り、先反りなどと比べると反りの深さは非常に浅いと思われます。
⬛️無反り(むそり)
江戸時代中期、漢文の頃には突き技を主体にした剣術が隆盛し、道場ででは竹刀を用いた稽古が主流になったため、それに合わせて反りの少ない刀や全く反りのない刀が造られた。また、鎌倉時代の短刀には反りの無いものが多いです。
日本刀の製法
刀の製法は当時の最先端テクノロジーであり秘伝の技だった。
まず原材料の鉄からして、現在のように鉄鉱石から精錬するのではなく、砂鉄を集めて鋼に鍛えていたのである。
そうして出来た8〜10Kgの玉鋼をさらに高熱で熱し、叩き続けることで、1Kg程までに鍛錬する。また、一本の刀を鍛えるには20俵の炭が必要だという。
大変なコストと手間がかかる作業である。
そうして出来た鋼だが一種類の鋼だけでは刀はできない。
刀は硬さと切れ味を求めるともろくなり、耐衝撃性を求めると切れ味が落ちる。
そのため、中心にはには弾力のある鋼を包み(皮鉄)、刃の部分は特に硬い鋼を加えて焼を入れる。
この複数の鋼を組み合わせて一本のの刀を作る作業は、工程が複雑化することもあって非常に難しく、高度な技術を要求された。
鋼同士がうまく定着せずに逆に強度を落としてしまう危険性もあるからです。
鎌倉時代の古刀は無垢鍛といって単一の鋼で造っているが、この場合、鋼自体が性質の異なる鋼を混合して強度と切れ味を持たせた。
また、鉄自体古い方が炭素含有量が多く、良質だったとも言われている。
江戸時代には、すでに良い鉄が手に入らなくなったという声が聞こえはじめ、古い寺などに使われていた釘など古鉄を再利用する刀工が多かった程のようである。